各種学校日本語教育振興ビジョン(2017)
2017年度は日本語教育業界にとって質的量的両面において新しい段階に入った年といえよう。 少子高齢化の進展に伴い、日本社会のあらゆる面で労働力不足が顕在化してきている。しかし移民は もちろん、外国人単純労働者の受け入れを認めないという国策を続けているにもかかわらず、一方では 技能実習生の期間や対象職種の拡大など受け入れ条件の緩和、留学生30万人計画の推進によるビザ発 給の緩和などを行ったことで実質的な外国人単純労働者が急増し、日本の経済構造の中に組み込まれてきた。
そのような中で、2025年には約38万人不足するといわれる介護人材を補うため、在留資格「介護」 が新設された。介護人材の入国、在留に関しては日本語能力が厳しく問われるが、養成施設の学生に対 する学費支援措置も留学生も日本人と同様に適用されることとなった。 その他、定住外国人子息の教育、夜間中学における日本語教育など、外国人への日本語教育が、これ からの国策として重要であることは論を待たない。
そのような状況であるにも関わらず、体系的な政策(担当官庁や、各種データおよびその整備、将来 政策等)は欠如したままであった。2016年11月、ようやく超党派議員による日本語教育推進議員連 盟が発足し、日本語教育基本法策定に向けた準備が進められている。 同時に官庁においても、管轄下の外国人問題に関わる法的整備が動き出すこととなる。技能実習生の ための新たな機構づくり、日本語学校の健全化推進のための新公示基準の制定・施行、罰則規定の通達、 日本語教師養成基準の明確化などが次々に行われたのである。
日本の高等教育機関(大学院、大学、専門学校 ) の現状を見ても、留学生受け入れ拡大につながる定 員充足率の緩和や、スーパーグローバル大学への国の支援など、さまざまな留学生受け入れ推進策が私 立学校の経営を支えている現実を無視することはできない。 留学生増加による影響は教育機関だけにとどまらず、留学生の生活を支える周辺事業から就職まで、 日本経済全体に波及するものである。
この法人は、学校教育法に基づき認可された各種学校(学校教育法134条)が連携することによって、 日本語教育の環境整備と各種学校日本語学校の振興を図り、日本語教育界の中核的役割を担うと共に、 日本語教育機関全体の牽引役として、日本の国際化推進、多文化共生社会の構築に資する活動を推進し、 併せて海外での日本語教育の普及啓発に寄与することを目的として発足した。
以上のような点を踏まえ、本協会としては「各種学校日本語教育振興ビジョン(2017)」を宣言し 次の事項を優先課題として、中期・長期的な事業計画を策定し取り組んでいく。
1. 日本語教育機関の教育力の強化
2. 日本語教育機関の経営基盤の強化
3. 日本語教育機関としての社会的信頼性の確保と実践
4. 日本語教育機関としての国内外での地位の向上